タイトル
著者
出版社 形態 発表年(初出)
義経伝

黒板勝美
中央公論社 文庫 1939
  大正三年に記された「武士道の美の原点」としての義経伝記。義経へのあふれんばかりの賛美と同情がひしひしと感じられる文章は判官びいきには心地よいことこの上なし。でもあくまでも義経を理想の武士像と見なす目的のため、やや都合のいい解釈もほどこされているような…。もっぱら義経弁護側から見た源平時代論といえましょう。
★★★★
  
義経は生きていた
〜義高(静の子)も由比ガ浜で
殺されていなかった〜

佐々木勝三
東北社 ハードカバー 1957
  義経は衣川で死んではいないという仮説を、東北地方の伝承をもとにつぶさに解明。と、これだけならよく知れた義経生存説ですが、この書の目玉は、義経のみならず義経と静の子も由比ガ浜で殺されずひそかに救われて佐々木高綱の子義高として育てられた、というあまりメジャーでない説の研究。信憑性はともかくロマンを掻き立てられる説なので、不肖ながら拙作「残夢」に使わせていただきました。
★★★
 
義経の周囲

大佛次郎
徳間書店 文庫 1966
  廃園/義経地獄破/短く華やか/復活/海尊/弁慶は美男/扇拍子/常磐/義朝/宗清/鞍馬寺/僧正坊/五条橋/金売吉次/熊坂/秀衝/平泉/光堂/黄色い鳩/伊勢三郎/頼朝/黄瀬川/浮島ヶ原/初陣/一の谷/扇の的/嗣信最期/教経・知盛/土佐坊昌俊/梶原景時/後白河法皇/武蔵坊/静御前/忠信/作り山伏/富樫/高舘/夏草/北方の王者
義経にまつわる多角的なエッセイ。おすすめです。
★★★★
  
義経伝説

高橋富雄
中央公論社 新書 1966
  序章:歴史と伝説/第一章:歴史以前/第二章:鎌倉の道理/第三章:都入り/第四章:源平国争い/第五章:さいはて/第六章:義経記の世界/終章:判官贔屓/系図/地図/年表
義経研究の入門書としていろんなところで紹介されているメジャーな新書。源平時代の全貌が義経という特異な人物を通してよく把握できます。また後半の「義経記の世界」の章では義経伝説の真実とそれが生じるにいたるプロセスがよくわかります。
★★★
  
源義経

角川源義・高田実
角川書店 新書 1966
  ※2004年に講談社学術文庫として文庫本サイズで再版
第一部(1:幼年時代/2:鞍馬脱出/3:鬼一法眼のこと/4:弁慶物語)
第二部(1:歴史への登場/2:鎌倉殿代官義経の戦績/3:源平争乱の舞台裏/4:兄弟の反目/5:義経悲劇の歴史性)
第三部(1:腰越状以後/2:西国落ち/3:雪の吉野山/4:勝長寿院縁起縁起/5:京都脱出/6:北国落ち/7:栗原寺/8:北方の王者/9:義経最期)

義経研究の内容の濃い新書です。
★★★
  
義経と日本人

和歌森太郎
講談社 現代新書 1966
  1:国民感情の中の義経(@義経の人気A義経の人柄B判官びいきC判官びいきへの社会史的条件)
2:義経の登場(@頼朝との生育のちがいA頼朝との貫禄のちがいB義経の容姿風貌C鞍馬時代の社会情勢D奥州下りまでの陸奥の情勢E物語に描かれた奥州下りF「日本史の人物」中の義経)
3:源氏再興の機会(@後白河院と平家の抗争A源氏の旗あげ)
4:平家討滅と義経(@平家の衰勢と東国A頼朝・義経の疎隔B平家を滅ぼす)
5:義経の失脚(@平家滅亡後の頼朝A義経の謀反)
6:義経の没落(@行くえ不明になる)

ですます調の平易な文章で書かれたたいへんわかりやすい、重宝な義経論新書です。
★★★★
  
源義経の謎

菊村紀彦
大和書房 ソフトカバー 1966
  序章:北上川挽歌/1:魅惑の人・源義経の謎/2:雪の夜、彷徨う母子/3:鞍馬天狗の誘い/4:大脱走/5:陸奥は花ざかり/6:老兵は消えず/7:翻る白旗/8:黄瀬川は見ていた/9:鎌倉…響く槌音/10:宇治川の涙/11:鹿も四つ足、馬も四つ足/12:逆櫓をめぐる黒い争点/13:優雅、あまりにも優雅な合戦/14:壇ノ浦、海底の都/15:義経ひとり都大路をゆく/16:腰越悲歌/17:兄弟垣に争うとき/18:流離の人と吉野山/19:憂愁舞曲のあとに/20:黄金の牢獄/21:生きている義経/22:成吉思汗は義経か/終章:現代人と義経
伝説の人・義経の実像を探る!ライトな視点とポップな構成で読みやすい。姉妹編に「弁慶の謎」あり。
★★★★
  
臼杵石仏
〜義経と運慶の秘密〜

大久保貴之
誠文堂新光社 ソフトカバー 1971
  序章/海洋と帰化人/真野長者/臼杵一族/為朝と義経/源平合戦/康慶と運慶
大分県の臼杵史。源為朝と義経伝説に言及、さらに臼杵石仏を作った運慶と若かりし日の義経の出会いがほのめかされている…ようですがスミマセンまだちゃんと読んでません。  
九郎義経の謎

伊藤加津子
共栄書房 ソフトカバー 1981
  第一章:三人の義経と佐渡流刑の謎
第二章:追討宣旨・院宣の朝令暮改の謎
第三章:落人九郎義経の謎
第四章:安徳帝御陵偽装説の謎
第五章:平家落人の謎
第六章:九郎義経の死と生存伝説の謎

源九郎義経と近江の山本義経、山下義経という三人の義経にまつわる謎を解く研究書。
ごめんなさい未読…
 
源義経
〜伝説に生きる英雄〜

関幸彦
清水書院 新書 1990
  T伝説は語る(鞍馬山の遮那王・平泉での義経・武の系譜)
U源九郎義経・頼朝・鎌倉(黄瀬川の対面・頼朝のけじめ・もう一人の義経、義仲、行家・義経の試金石・東国武士団)
V判官義経・後白河院・京都(一ノ谷の合戦・戦さの作法・後白河法皇と義経・屋島の合戦・壇ノ浦の合戦・腰越の悲嘆・義経の謀叛)
W義顕・秀衝・平泉(その後の義経、静・再び奥州へ・鎌倉と平泉・頼朝の夢・義経の最期)
X再び伝説は語る(海を渡る義経・未完の英雄)
義経関係略年表

義経研究の新書。わかりやすいです。
★★★
  
義経の謎
〜「薄墨の笛」が語る
源平秘史〜

邦光史郎
祥伝社文庫ノン・ポシェット 文庫 1993
  1章:残された義経ゆかりの「薄墨の笛」
  〜清水市・鉄舟寺に眠る笛は、何を証すのか
  @発見された“薄墨と名づけたる笛”Aいつ、なぜ、義経は寺に寄贈したのかB笛の寄贈を暗示する「腰越状」
2章:なぜ義経は“海戦”に勝てたのか
  〜壇ノ浦で「陸の源氏」が「海の平氏」を滅ぼせた理由
  @権勢を誇った「海の平氏」A坂東武者を掌握した「陸の源氏」B面目躍如!「一ノ谷」と「屋島」の奇襲C「壇ノ浦」――義経は海を知っていた!
3章:義経は二人いた!?
  〜“もう一人の義経”が生んだ英雄義経像
  @もう一人の義経“山本義経”とはA義経に与えた“山本”義経の影響B「英雄は死なず」民衆が育んだ義経伝説

義経の笛をめぐって読み解く歴史ドキュメント…というか歴史ミステリー。おもしろいです。
★★★★
  
源義経のすべて

奥富敬之
新人物往来社 ハードカバー 1993
  源義経とその時代(奥富敬之)/義経の出自(伊東和彦)/義経の合戦(稲生晃)/義経と頼朝(前川佳代)/義経と陸奥国(岡田清一)/義経をめぐる女たち(小石房子)/古典世界の義経(福島千賀子)/「腰越状」の全訳と義経悲劇の原因(古川良)/義経伝説とその周辺(関幸彦)/義経関係人物事典(稲生晃)/義経関係史跡事典(山田淳一・國分重男)/義経関係年譜(大野泰邦)/義経関係文献(青山洋一・山崎郁子)/清和源氏略系図(大野泰邦)
義経のすべてがこれでわかる!――わけではないが年譜や人物史跡事典、文献資料などは非常に便利で重宝します。余談ですが編者の奥富氏は表向き公平な立場で論じておられるつもりでも文章の端々から抑えきれない義経嫌い(&頼朝好き)の念がよく伝わってきます。
★★★
 
義経紀行
〜弁慶はエミシの
末裔だった〜

林順治
彩流社 ハードカバー 2002
  天皇家・藤原摂関家・源氏平家の骨肉相食む葛藤と争乱のなかで義経と弁慶の絆はなぜ生まれたのか。平安末期から鎌倉初期に起きた驚天動地の歴史に「戦さ」と「語り」の世界から光を当てる。
ごめんなさい末読・・・
  
源義経111の謎

楠木誠一郎
成美文庫 文庫 2004
  第一章:義経と源平合戦―― 一ノ谷、屋島、壇の浦の戦略と戦術
第二章:牛若丸時代――幼き義経と常盤御前の日々
第三章:頼朝との対面と決裂――運命を分けた兄弟の愛憎劇
第四章:弁慶と静御前――義経をささえた男と女の物語
第五章:平泉と奥州藤原氏――義経に夢を賭けた北の雄
第六章:義経の最期――合戦の天才の壮絶な死
第七章:義経北行伝説――海を渡る英雄の「その後」
源義経関係系図/源義経略年表/源義経関係人物事典/参考文献
「希代の戦上手な武将」源義経の伝説と真実を111のQ&Aで読み解く書。表紙の義経イラストがやたらタッキー似。Q&A形式の一見わかりやすい初心者向けの構成ですが中身はかなり専門的でマニアックです。
★★★
  
義経の謎<徹底検証>

加来耕三
講談社 文庫 2004
  序章:義経を彩る歴史ロマンの謎
第一章:源平両氏の勃興の謎
第二章:武士が進出以前の、王朝政治の謎
第三章:王朝ロマンの怪奇と現実の謎
第四章:保元の乱に隠された平家謀略の謎
第五章:平治の乱と『平家物語』にかかわる謎
第六章:「平家にあらずんば人にあらず」の謎
第七章:頼朝の挙兵にまつわる謎
第八章:「驕る平家は久しからず」の謎
第九章:日本軍略・兵法の謎
第十章:源義経、鞍馬修行時代の謎
第十一章:日本版『三国志』の英雄・木曽義仲の謎
第十二章:平家滅亡の陰に隠された謎
第十三章:鎌倉幕府存続の謎
終章:義経と中世にかかわる「if」にあえて挑む
義経とその時代ににまつわる謎を150の項目を設けてより奥深く綿密に検証した、歴史玄人向けの内容の濃い本。源平争乱のみならずバックボーンとなった平安王朝時代の政情や紫式部、安倍晴明などについても幅広く取り扱っています。
★★★
  
史伝 源義経

岳真也
学研M文庫 文庫 2004
  プロローグ:元寇――その恨みは海を越えて
第一章:父の無念を心に秘めて
第二章:奥州平泉・藤原秀衝のもとへ
第三章:歴史の表舞台に立つ
第四章:常勝の将軍
第五章:源平最終戦
第六章:栄光からの転落
第七章:頼朝との決別
第八章:義経散華
第九章:義経生存説とチンギス・ハン伝説
源義経にまつわる多彩なエピソードを、『平家物語』『源平盛衰記』『義経記』等出典を明らかにしつつ小説仕立てで紹介・分析していく、とても読みやすい義経伝記ガイド本。初心者におすすめです。
★★★
  
源義経

五味文彦
岩波書店 新書 2004
  T幼きころ――史料の性格を考える
U童の時代――『平治物語』の世界
V英雄への階梯――『義経記』の世界
W英雄時代――『吾妻鏡』の世界
X義経の力――文書から探る
Y合戦の英雄――合戦記と物語
Z頼朝との対立――書状の役割
[落日の義経――宣旨と院宣
\静の物語――『吾妻鏡』と『玉葉』
]奥州の世界へ――記録と伝説
参考文献/源義経関連略年表/あとがき/索引
数ある史料を細やかに分析しながら義経と源平時代の真偽をバッサバッサと斬ってゆくシビアな研究書。これまでの定説をくつがえす見解の数々に「なるほど!」と膝を打ったり「そうかあ?」と鼻白んだり、むずかしいけど読みごたえたっぷりの内容です。
★★★
  
源義経 大いなる謎

川口素生
PHP 文庫 2004
  序章:源義経とその時代をめぐる謎
第1章:牛若丸の生い立ちをめぐる謎
第2章:義経の父祖・清和源氏&鎌倉幕府をめぐる謎
第3章:平清盛&平氏一門をめぐる謎
第4章:義経VS義仲、義経VS平氏の決戦をめぐる謎
第5章:義経の妻妾&子供をめぐる謎
第6章:義経VS頼朝の対立をめぐる謎
第7章:陸奥平泉&義経の最期をめぐる謎
第8章:義経・弁慶と演劇・文学をめぐる謎
第9章:義経不死伝説&ジンギスカン説をめぐる謎
源平略系図/源義経関係略年表・関係人物・関係史跡/主要参考文献一覧
義経とその時代について101の項目を設けて読み解くガイド本。「清和源氏が全国各地で繁栄したわけは」という学術的なものから「北条政子が頼朝の不倫相手の屋敷を破壊したわけは」なんてスキャンダラスなネタまで幅広く取り扱っています。
★★★
  
源義経99の謎と真相

監修/高木浩明
二見書房 文庫 2004
  第1章:義経の出生と奥州にまつわる謎
第2章:兄・頼朝との再会と初陣をめぐる謎
第3章:平家滅亡に追いこんだ義経、怒涛の快進撃の謎
第4章:栄光の道を閉ざされた英雄・義経の流浪の日々の謎
第5章:奥州で悲劇の最期を遂げた義経にまつわる謎
第6章:義経のイメージを覆す史実とスキャンダルの謎
第7章:悲劇の英雄・義経を支えた家来たちの謎
第8章:義経伝説を彩った輝かしい脇役たちの謎
第9章:時代を超えていま再びよみがえる義経伝説の謎
義経にまつわる謎を奥深く解説しています。史跡写真も豊富。複数の研究者による共著なので章ごとに微妙に見解のズレがあるのもまた味か。オビに「NHK大河ドラマを10倍楽しむ本」とありますが、ドラマをあくまでドラマとして楽しみたい人にはこういうウンチク本って逆に興ざめしちゃうんじゃあ…。
★★★
  
義経伝説
判官びいき集大成

編/鈴木健一
小学館 ソフトカバー 2004
  第1章:伝説の誕生
第2章:英雄の登場
第3章:落日の義経
第4章:日本人の心の義経
略年譜/もっと読みたい人のブックガイド/関係地図
「平家物語」「義経記」はもとより浄瑠璃、御伽草子、歌舞伎、川柳などさまざまなジャンルで描かれた義経像を、各時代の民衆の「判官びいき」を慮りながら考察してゆく一冊。義経にまつわるエピソード(事実から作り話まで)がほぼすべて把握でき、文章もとても読みやすいのでおすすめです。
★★★★
  
義経の正体

佐治芳彦
KKベストセラーズ 文庫 2004
  序章:義経の背後に漂う人々
第1章:源氏の発生と野望
第2章:源氏につながる漂泊の人々
第3章:遊女を母にもつ義経と清盛
第4章:新たなる希望の星「義経」
第5章:源氏の隠れ里「鎌倉」
第6章:義経の死と時代の終焉
終章:判官びいきが生んだ不死伝説

「山の民」をキーワードに、源平の時代背景、義経の周辺を読み解いていく書。異説としてはおもしろいですが、すべてを「サンカ」「タタラ」に帰結しようという論説はやはり一般的ではない。
★★
  
義経の悲劇

奥富敬之
角川選書 新書 2004
  第1章:源平合戦前史(源氏から平家へ/異なる生い立ち/頼朝の挙兵)
第2章:東国自立への頼朝の決断(御家人制の確立/目的は復讐にあらず/覇を競う源氏の氏人たち)
第3章:専制君主後白河院(北陸道の諸合戦/後白河院の策謀/上洛戦を決意した頼朝の意図)
第4章:義経の悲劇の本質を探る(さまざまな思惑が露呈した一ノ谷合戦/頼朝の理想を理解できない義経/義経の本質が露呈した屋島ノ合戦/頼朝に決別された義経)
第5章:通じなかった頼朝の願い(義経・頼朝の相克/流浪の果てに)
エピローグ:義経を廻る世評の歴史
義経の悲劇の原因は彼の後白河院(公家社会)への傾倒にあるとして頼朝との相克の必然性が説かれています。義経が意識的に頼朝に逆らったと決めつける強引な論法に辟易。著者の頼朝びいきの強い強い一念がよくわかる一冊です。
★★★
  
義経の登場
〜王権論の視座から〜

保立道久
NHKブックス 新書 2004
  序章:「平泉姫宮・伯耆王子」と「九条院」――再検討の起点(義経の新しい歴史像)
第1章:母・常磐と父・義朝――平治の乱まで(源氏の棟梁と雑仕女)
第2章:九条院権大夫平清盛と牛若丸――平治の乱の戦後処理(母・常磐の人生環境)
第3章:青年期義経の人生環境――常磐・一条長成・源頼政の交点(「義経以前」の義経 史料の偏った性格)
第4章:内乱の開始と平泉姫宮との邂逅――高倉範季の位置(義経と平泉姫宮)
第5章:以仁王の蜂起と義経の登場――暴発した王統対立(以仁王の蜂起を政治史の中心問題にすえる)
終章:東大寺大仏再建と平泉姫宮――義経の没落の先にあったもの
九条院に仕えた生母常磐や義父の一条長成など、義経をめぐる母系(貴族社会)ネットワークに着眼し、義経が決して「卑しい庶子」ではなかったという論が展開されています。斬新な仮説として興味をそそられます。
★★★
  
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